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若山 正人

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表現論とその統計学・工学への応用

若山 正人(拠点リーダー)(数理学府)
学位:理学博士(広島大学)
専門分野:表現論とゼータ関数

活動報告書

古くから数学は、自然科学を記述する言語だと考えられてきました。これに対比するなら、表現論とは、対称性を記述する言語です。そして、数学が幅広い応用をもつように、表現論も数学や物理学等のさまざまな分野において大いに役立ってきました。たとえば、対象とする問題が見たところたいへん複雑でも、対称性に着目することで、扱いが容易な問題に還元できる場合があります。こうした場面では表現論が力を発揮します。もちろん、表現論固有の研究があることは他の数学分野と同じです。たとえば、「基本となる表現」の分類やそれらの代数的・幾何的な構成、与えられた表現を基本的なものへ分解する問題などは、とりわけ大切です。それらは、数学のなかにあってすら、いつ役立つかの予測は難しいものですが、重要性は疑いないものです。

これまで私が行なってきた研究は、表現論の数理物理や整数論、とくにゼータ関数などへの応用です。以下に、最近のテーマから出発しマス・フォア・インダストリとして推進する研究の計画を述べます。

[非可換調和振動子のスペクトルの研究]

非可換調和振動子とは、10年ほど前に、A. Parmeggiani(Univ. Bologna)と考え始めた、行列及び正準交換関係からくる2種類の非可換性を備えた常微分方程式系です。これは特別な場合として量子調和振動子(の組)を含んでいますが、一般的には生成・消滅演算子の存在は不明であり、スペクトルの具体的決定は難問です。しかしその後、この問題が Heun の微分方程式のモノドロミー問題や(スペクトルゼータ関数を通し)楕円曲線のモジュライに関わるなど、豊かな研究対象であることも判ってきました。対応する物理系は未発見ですが、ある機械工学的なモデルに、似たようなスペクトル(分布のグラフから)を持つものがあります。突き止めたいテーマです。

[α行列式の表現論と不変式論]

α行列式は、統計学の要請から導入された(Vere-Jones,1988年)もので、行列式(α=-1)とパーマネント(α=1)を補間します。数年前より、木本一史(琉球大理)、松本詔(名大多元)の協力を得て、その冪が生成する一般線型群の加群の研究を始めました。冪が1のとき、それは表現のレベルで、交代および対称テンソル積表現を補間する理論です。またそれは、たとえば特殊関数の新しい捉え方を提案する可能性があるほか、wreath-行列式なる新しい相対不変量も発見され、不変式論・組合せ論的研究が進行中です。統計学でも重要な zonal 多項式との関わりも出てきました。このように、それは、統計学とも複数の接点をもち、正値性の問題から確率論とも深く繋がっている研究ですが、いまだ具体的なことは何もわかっていません。統計学へのフィードバックが研究対象です。

[対称空間(とくに対称錐)上の調和解析と付随する特殊関数の研究]

近年、最適化問題への情報幾何的アプローチがなされています。定式化の土台となる可微分多様体には、たとえば正値対称行列がなす対称錐などがあります。そのような多様体は、リー環・ジョルダン代数などを用い群論的に捉えられるもので、その研究は歴史もあり、優れた数学的テクニックが蓄積されています。しかも近年、統計学者によっても、このような群論的観点からの研究が進められています。私の目的は、統計・情報多様体とその(平坦)接続に両立する数論的構造の研究とその応用です。

[乗法的ラドン変換の研究]

これは,古典的な保型形式のHecke 理論のq-類似の研究が契機ではじめました。最近出版した啓蒙書(岩波書店,2008年,編著)でも取り上げたCTスキャンなどの数学的基礎を与えるラドン変換(理論的には,積分幾何・表現論のテーマです)の数値的逆変換として、乗法的(離散)変換の研究から接近しようというものです。

q-Riemann zeta の第一零点の q : 1→0 での動き

ところで最近、q- Hecke 理論に関する単著論文を発表(2008年)した博士後期課程の学生のひとりは、インターンシップに赴いた際、車のエンジン制御に関係する最適化問題の研究で大きな貢献をしました。必要な統計学の勉強は、インターン中に統計学を専門とする教員の支援を受けながら進めたものですが、数学の基礎力が専門からは外れていても大いに役立った好例です。私自身の視野を広げつつ学生たちも巻き込み、マス・フォア・インダストリを推進していきたいと考えています。

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