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中尾 充宏

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偏微分方程式の解に対する数値的検証法

中尾 充宏(数理学府)
学位:理学博士(九州大学)
専門分野:計算数学
ユニット:数と式

活動報告書

現在の研究テーマは、「偏微分方程式の解に対する数値的検証法」である。

偏微分方程式は、理工学や産業界でも数値シミュレーションに関連した数学モデルとして頻繁に登場し、その解を求めることは産業技術においても大変重要な問題である。しかしながら、数学的に厳密な解を求めるためには無限次元空間の壁を超えなくてはならず、その理論的・数値的困難さのため、工学等の現場では多くの場合近似解を求めて満足しているのが現状である。
筆者の目ざすのは、偏微分方程式の厳密解の存在を計算機に証明させることである。筆者は、楕円型境界値問題の有限要素近似とその構成的a priori誤差評価(事前誤差評価)を、区間解析と有効に組み合わせることにより、厳密解がコンピュータ上で捉えられことを、1988年世界に先駆けて立証した。この手法はその後、「中尾の方法」と呼ばれるようになり、周辺の研究協力者の支援も得て、同じ原理にもとづく研究を進め、現在までに2階半線形楕円型方程式のDirichlet問題については、検証精度・効率および適用領域の点で実用レベルに達する成果を上げてきた。これは近似計算の厳密なa posteriori誤差評価(事後誤差評価)という計算の品質保証の意味とともに、理論的研究が 困難な解析学上の問題に対する計算機支援証明(computer assisted proof)という観点からも世界的に注目を集めている。

現在に至るまでに定常Navier-Stokes方程式や変分不等式、あるいは楕円型作用素の固有値問題および逆固有値問題にまで研究対象を広げて検討を続け、最近では、理論解析が困難なNavier-Stokes方程式支配下の非線形熱対流問題(Rayleigh―Benard問題)に対し分岐解存在の計算機支援証明を手がけている。即ち、その空間2次元問題では、分岐曲線の検証付き追跡に加えて、分岐点自体の検証を定式化し、分岐曲線上で実際に対称性破壊分岐が起こることを、精度保証付き数値計算によって数学的に厳密に証明した。さらに3次元問題の熱対流現象として最も興味深い六角形パターン形成の数値的検証にも成功している(図参照)。これらはいずれも既存の理論的アプローチが困難な問題であり、そういった問題への計算機援用証明として重要な結果である。
このほか、有限要素法の構成的a priori誤差評価に現れる各種定数をコンピュータ演算により数値的に決定する方法を導き、理論的な決定が困難な数値を数学的に厳密に精度保証することにも成功している。

産業界における数値シミュレーションにおいては、微分方程式の近似解法をはじめとする様々な数値計算(科学計算)が現れる。その中には、数学的に見て計算精度に疑問がもたれる手法も多々用いられており、そのことがシミュレーション結果と実際の現象との不一致を招くこともしばしば観察されている。それらを数学的信頼性の観点から見直し、計算の精度を保証することは数値シミュレーションの高精度化にとって重要な課題である。 筆者の研究によって、工学や産業界等の実際問題に現れる広い範囲の偏微分方程式の解を、自由自在に精度保証できるためには、未だ解決すべき問題が山積しているが、コンピュータパワーの飛躍的向上と検証技法の理論的・実際的改良によって、将来その日が来るものと確信している。

さらに、数学上の観点からは無限次元の問題に対してどこまで計算機を用いて厳密な数学の議論が展開できるのか、その限界にまで挑戦したいと考えており、将来的には構成的数学としての「計算機援用解析学」を、数値計算を基盤とした立場から創設することを目ざしている。

honeycomb(ハチの巣)パタ-ンと呼ばれる熱対流現象(実験)

熱対流問題の「精度保証された数値解」

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