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田端 正久

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事業推進担当者

現象の数値シミュレーション

田端 正久(数理学府)
学位:理学博士(京都大学)
専門分野:数値解析
ユニット:形と流れ

活動報告書

自然界に現れる種々の現象を解析、予測するために、今日、数値シミュレーション技法は必須である。産業界においては、自動車、船舶、航空機関係の製造業やダム、高層建築物などの土木建築業における大きい対象物から、生体内血液流など医学関係やナノテクノロジー関係の小さい対象物まで、広範な数値シミュレーションがなされている。

それらの現象を記述する数学モデルは、ほとんどの場合、偏微分方程式系で記述される。我々の生活している自然界が、空間3次元、時間1次元の独立変数を持つからである。偏微分方程式系で記述されるそれらの解を現実の問題で解析的に求めることはほとんどの場合できないが、今日では、数値解析理論の発展と計算機能力の向上により、標準的な問題に関しては、実用的なレベルで数値的に解けるようになってきた。偏微分方程式の解を求め、現象を解析予測する数値シミュレーションは科学技術計算の主要な位置を占めている。

計算機は非常に高速に大量の加減乗除計算をすることができるが、有限回の計算であることに変わりない。偏微分方程式の独立変数が連続的に変化することを計算機では実現できないので、離散的変化に置き換える。このようにして、離散方程式が得られ、計算機ではこの離散方程式を有限回の加減乗除で解く。計算機で求めた解は離散化方程式の解なので、偏微分方程式の解とは異なり近似解にすぎないが、離散化の度合いを上げる、すなわち、空間の分割を小さくしまた、時間刻みを小さくすれば、偏微分方程式の解に収束することを示すのは非常に重要である。これらは、安定性、収束性の議論といわれ、偏微分方程式の数値解析の核心をなし、数値計算結果の正当性を保証するものである。そのような数値計算スキームを構築することが肝要である。解くべき方程式が複雑になってくると、スキーム全体での議論は容易でなくなるが、方程式のタイプに応じてスキーム構成の理論の整備も進んでいる。このような研究には、偏微分方程式や関数空間に関する数学的知識が非常に有用である。

数値シミュレーションは種々の分野でそれぞれ必要性に応じてなされているが、偏微分方程式の数値解析という観点から眺めれば共有される部分が多い。例えば、航空機の周りの流れも血液流も同種の偏微分方程式系で記述され、その計算スキームの基盤は共通であり、数学的には多くの共有する性質がある。個々の現象に応じた特性を考慮することは必要であるが、一見異なるように見えるものの中から共通の特質を抽出して、問題の本質を明らかにすることは、数学が得意とすることである。

計算機の能力の向上に伴い大規模計算が実現できるようになると、計算スキームの良し悪しが結果に鮮明な違いを出し、良好な計算スキームの作成が一層、重要になってきている。現象が複雑になると、問題の固有の構造を正しく捉え、かつ、数学的に健全な計算スキームを作成しないと、信頼ある計算結果を得ることはできない。

偏微分方程式の数値解析の目標は、計算機を用いて、信頼できる数値結果を高速に求めることである。現実の計算に際しては、数値計算スキームを構築し、その有効なアルゴリズムを作成し、それを正しくプログラミングし、実際の計算を行う。多くの場合、大規模連立一次方程式を解く必要があるので、その有効なソルバーの選択、あるいは、新しいソルバーの構築と作成の作業も必要となる。このように、種々の過程を経てはじめて、数値シミュレーション結果を取り出すことができる。

数値シミュレーションの一例を示そう。下図は、湾曲した管内を複数の気泡が上昇し併合する現象の数値計算結果である。それぞれの流体の運動はナヴィエ・ストークス方程式に支配され、二つの流体の界面で表面張力が働いている。エネルギー安定有限要素法を用いて我々が開発した計算スキームを使用している。初期時刻に静止状態にあった9つの気泡が上昇する途中図を示したものである。図中の曲線はその時刻での流線を表しており、流線が密なところでは流れが速い。最後に1つの大きい気泡に併合される様子が計算できる。

図1.湾曲管内を上昇併合する複数の気泡

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