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山田 光太郎

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ワイエルストラス型表現公式とその応用

山田 光太郎(数理学府)
学位:博士(理学)(慶應義塾大学)
専門分野:微分幾何学
ユニット:形と流れ

活動報告書

曲線や曲面の現代的な可視化問題の基礎理論として重要と思われる「ある種の表現公式をもつ曲面」の性質を考察する。
ワイエルストラス表現公式とは、3次元ユークリッド空間の極小曲面---与えられた境界を張る面積最小の曲面;石鹸膜の数理モデルとして良く知られている---を複素解析的な関数を用いて表現する公式である。この種の表現には曲面のパラメータ(座標)のとり方が含まれている:標語的には「曲面のよい表示をえるためにはよいパラメータをとらなければならない」のである。

よいパラメータをとることによりよい表現公式が得られるのはユークリッド空間の極小曲面に限らない。実際、平均曲率一定曲面、双曲空間の平均曲率1の曲面、双曲空間の平坦曲面、ミンコフスキー時空の極大曲面などの対象はワイエルストラス表現公式の類似が成り立つ対象であり、それを用いて曲面のさまざまな性質を明らかにしてきた。

一方、本プログラムの事業推進担当者であるティム・ホフマン氏、ウェイン・ラスマン氏は、彼らの記事にもあるように曲面の離散化に取り組んでいる。これはなめらかな曲面をコンピュータによって可視化するために必要不可欠な問題であるが、これもまた標語的に言えば「よい離散化はよいパラメータのとり方から生まれる」。実際、ホフマン氏は isothermic なパラメータを許す曲面のクラスに対し、そのパラメータを用いたよい離散化を与えている。ラスマン氏の記事にある双曲空間の平坦曲面の離散化は、このような路線の上にのった研究と考えることができる。
世間一般に信じられている(と思われる)こととは違い、このような離散的な表現は、古典的な微積分を用いた連続的な表現にくらべて非常に複雑である。したがって、離散化する以前の曲面の構造を調べることは、離散化・可視化にとって必要不可欠なことと考えられる。とくに、ここではワイエルストラス型表現公式が存在する曲面の微分幾何学的な性質を詳細に調べ、離散化の手がかりにしたい。

とくに双曲空間の平均曲率1の曲面(CMC-1曲面)や平坦曲面の基礎理論はわれわれ(梅原雅顕氏、ウェイン・ラスマン氏、山田らのグループ)によってかなり整備されたといってよい。その次の段階として、Hertrich-Jeromin氏は双曲空間のCMC-1曲面のある離散化の方法を提案しているし、ウェイン・ラスマン氏はティム・ホフマン氏や吉田正章氏とともに双曲空間の平坦曲面の離散化の方法を模索している。とくに後者は(連続的な場合に)自然な状況で特異点が現れる対象であることが知られており、そのことが「離散的な曲面の特異点をどのようにとらえるか」という問題への一つのヒントを与えていることは、ラスマン氏の記事にあるとおりである。

今後、さまざまな、よい表現公式をもつ曲面のクラスの微分幾何学的な理論を構築し、離散化・可視点化のヒントを与えていきたい。
微分幾何学は可視化の基礎理論を与えているが、逆に、可視化の技術は今や微分幾何学、もっと広く数学の研究に必要不可欠である。実際、特殊な曲面の例を構成したならばそれを図示することは現在では普通である。また、可視化により微分幾何学の「実験」が可能になった、ということもできる。そこで、ベルリン工科大学、マサチューセッツ大学などの研究グループは、微分幾何学研究のための曲面の可視化ソフトウェアを開発してきた。一方、わが国では研究ツールとしての可視化の重要性があまり認識されていなかったように見受けられる。汎用の数学ソフトウェアを用いる場合でも、表示式が与えられれば綺麗な絵が簡単に現れるわけではなく、それなりの工夫が必要であるが、そのためのスキルは蓄積されてこなかったように見える。学部・修士課程の教育の段階で積極的な可視化ツールの利用が望まれるが、とくに微分幾何を学んだことのない学生諸君に、絵を描きながら微分幾何に入門しよう、というテキスト「技術者のための微分幾何学入門」を著した。これは本格的な曲線・曲面の微分幾何のテキスト(小林昭七氏のものや、梅原雅顕氏と山田のものなど)を読むための準備とも言えるもので、数学を専門として学んでこなかった学生諸君に役に立つものと期待している。

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