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事業推進担当者

非正則統計モデルの理論と応用

二宮 嘉行(数理学府)
学位:博士(学術)(総合研究大学院大学)
専門分野:数理統計学
ユニット:形と流れ

活動報告書

21世紀に入り,計算機の発展と測定技術の進歩により,科学や産業界の諸分野において大規模かつ多様なデータが蓄積され,そこから情報を抽出するために統計科学の需要が一層高まりつつあります.また,計算機の発展は大量データの蓄積を可能にしただけでなく解析の速度も飛躍的に向上させたため,計算負荷は高くてもよいからより有効な結果を与える,といったような新しい計算機的手法の開発が重要な課題となっています.

それでは過去に構築されてきた計算機に頼らない理論というのは必要がなくなったか,というと当然そうではありません.例えば,それらは計算機的手法の一部に組み込まれていたりして,重要な役割を果たしています.本来は数値計算を駆使して求めなければならない量が,解析的な計算で瞬時に求められ,解析全体の計算時間が1/100とか1/1000になるのであれば,それは現在でも大きな意義をもつことになります.なぜなら,計算負荷が減ったぶんを,さらに複雑な解析をするために使うことができるからです.

図1

このように,現在いわゆる計算機的手法と理論的手法の中間点をうまく構築することが求められています.実際,2004年にまとめられたNSFの報告書「統計学:21世紀における挑戦と機会」においても,六つの挑戦的研究の中の一つに「証明と計算機実験の中間点」が挙げられています.そしてその例として,識別不能性をもつモデルの解析手法が挙げられています.識別不能性をもつモデルとは,パラメータの値が異なっていても実際には同じものを与えるような箇所をもつモデルのことで,幾何的には図1のように表現されるものです.そして識別不能性をもつがゆえに,それを用いた解析では通常とは異なる統計理論が必要となります.

私の研究対象は,識別不能性をもつモデルを含む非正則統計モデルに対する統計理論です.非正則といっても,それは解析にあたって通常の理論を適用できないという意味であり,通常用いられないという意味ではありません.実際,経済学でよく扱われる変化点モデル,工学などでの判別問題における基本モデルである混合分布モデル,音声認識などで重用される隠れマルコフモデル,工学の非線形回帰問題全般で用いられるニューラル・ネットワークモデル,心理学の中で最もよく用いられる基本モデルの一つである因子分析モデルなどは,非正則統計モデルに含まれています.

図2

私の直近の研究は,上で挙げた因子分析モデルが図2のように表現されることを用い,そのモデル選択理論を導いたことです.実はこれは,心理学者からの要請を受けて始めたことです.このように,数学分野だけでなく科学や産業界の諸分野と交わることにより,そこでの需要が高い問題を扱っていく,というスタイルで研究・教育を今後もおこなうつもりです.そして,数理的センスと応用的センスを両方兼ね備えた人材を養成し,マス・フォア・インダストリに貢献するつもりです.

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